「おい,シーナ,逃げるなよ」
これは,椎名誠の新刊「続 失踪願望。」(集英社)の帯に書いてある文です。
この本は,今年80歳になる椎名さんの日記なのですが,巻末に昨年亡くなった椎名さんの盟友である目黒考二さんの追悼小説が掲載されています。
タイトルは「さらば友よ!」です。
これを読みたくて買いました。
さて,目黒さんは,どうして椎名さんに「逃げるな!」と言ったのでしょうか。
何から逃げるなと言ったのでしょうか。
ここでは,触れませんが,この「さらば友よ!」を読むだけでもこの本を買う価値はあります。
これまでの椎名さんの私小説とは違った「真・私小説」と言ってもいいぐらいのリアルな小説となっています。
さて,日記の後半は,目黒さんが亡くなり喪失感が漂う内容となっています。目黒さんの名前が何回も出てくることから,椎名さんの心の痛みが伝わります。
〈引用始まり〉(p186)
彼は二歳年下だったが完全に対等であり,時に「シーナ,それは違うぜ」とまっすぐに言ってくれる数少ない友人だった。多くのことを諭された。兄貴のような弟分だった。
〈引用終わり〉
大学生の頃に友人のKくんから紹介してもらった「哀愁の街に霧が降るのだ」を読んだことがきっかけとなり,椎名誠さんのファンになりました。それ以来ずっと追っかけてきました。自分の人生と椎名さんの本が同時進行していたのです。
その椎名さんの最近の文章から,あらためて自分が本当に歳をとったことを確認しました。
1つの時代に一区切りする時が近づいていることは間違いありません。
再度「哀愁の街に霧が降るのだ」(情報センター出版)を読もうと思います。