●「命もいらず 名もいらず(下)明治編」(山本兼一 集英社文庫)★★★★
歴史上の人物を描いた小説をいろいろ読んできましたが,この小説の主人公である山岡鉄舟ほど人間的な魅力を感じる人物はいません。
あの西郷隆盛や勝海舟,清水次郎長,そして明治天皇まで影響を与えた人物なのです。
ただひたすら剣術と揮毫(書道)と座禅を愚直に行ってきた鉄舟は,地位や金銭に目もくれず,すべての人々を受け入れたのです。
上下巻で1200ページの大作ですが,とても読みやすく割とサクサク読むことができました。今年読破した本の中では,第1位です。
本屋大賞に輝いた「海賊とよばれた男」に近いものがあるかもしれません。
最後に山岡鉄舟という人間をよく表している文を紹介します。
〈引用はじまり〉
国とはなにか
鉄舟は,ふと,そんなことを思った。
人が集まり,ひとつの国家をつくろうとすると,どうしても意見の齟齬がでてくる。
勝った者はよい。勝った者の思い通りの国ができる。
負けた者は,どうするか。
唯々諾々と,勝者に服従するか。
鉄舟にも答えはない。
ただ,そのとき,その場で全力をつくす。
それだけが,鉄舟の信条であり,思想である。
国のために全力をつくす。
ということは,鉄舟にとって,
人のために,全力をつくす。
と同義である。衆生の安寧のために,できることをすべてやる。それが,かならず国のためになると信じている。
〈引用終わり〉
歴史の教科書に出てくるいろいろな人物について,電子辞書でひとりひとり調べてみます。もっと魅力的な人物に出会えるかもしれません。
とりあえず,次は西郷隆盛に関する小説を読んでみようと思っています。
- 作者: 山本兼一
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2013/05/17
- メディア: 文庫
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