半径3mの教育論

中学教師の教育雑感記

2426 数字の向こう側

ホームページ時代の2010年1月16日に書いたものです。
この考えは今も変わりません。



906 数字の向こう側(1/16)
 先日,NHKの宮崎駿氏と養老孟司氏の対談番組を観た。その中で,養老さんが言っていた
 言葉が記憶に残った。それは,交番などに書かれている「今日の死亡者数 1名」掲示板についての話である。
 この1名は一体何を伝えようとしているのか。死者の数だけを提示するだけでは,命の大切さを
 伝えることはできない。それよりも,○○○男さんが交通事故で死亡しました。という名前と
 死体の写真を提示した方がよっぽど,命の大切さが伝わるのではないかと養老氏は語っている。
 つまり,日常生活から死というものが隔離されてしまっては,本当の意味での命の尊さは伝わらない
 ということだ。
 確かに,私自身も社会科や道徳の授業でも,死者や行方不明者の数を提示することで,被害の大きさや
 命の大切さを教えている。テレビや新聞のニュースでも数によって,被害の大きさを伝えようとしている。
 しかし,そうではない。
 数の向こう側にある,○○○男さんの命,生活,家族などを知ることにより,命の重さがわかるのだ。
 血の通っていない数字に意味があるのではない。一人一人が持つ名前のついた命に意味があるのだ。