半径3mの教育論

中学教師の教育雑感記

2427 読破80冊目「帰ってきた男」

●「帰ってきた男」(小熊英二 岩波新書★★★
1925年生まれの小熊謙二さんは徴兵されて満州へ送られました。その後,シベリアでの抑留生活が待っていました。
1948年にようやく帰国できたのもつかの間,結核に犯されてしまいます。


この本は,小熊謙二さんの息子である,英二さんがインタビューして書いたのです。
父の人生を通して,普通の人が生きた戦前,戦中,戦後を描いています。
この本が素晴らしいのは,当時の生活を細かく紹介している点です。例えば,街並みや当時の物価,給料など具体的な数字を紹介しています。
悲劇的な人生を描いているのですが,激しい感情を表すこともなく冷静な目で自分が置かれた状況を語っています。
謙二さんの最後の言葉が心にしみます。
しかし,これだけ厚い岩波新書を読んだのは初めてでした。389ページです。

〈引用始まり〉
さまざまな質問の最後に,人生の苦しい局面,もっとも大事なことは何だったのかを聞いた。シベリアや結核療養所などで,未来がまったく見えないとき,人間にとって何が一番大切だと思ったか,という問いである。
「希望だ。それがあれば,人間は生きていける」
そう謙二は答えた。