半径3mの教育論

中学教師の教育雑感記

5619 泥臭いキャリア教育

2学期の定期テストが10月末に行われます。

今日の授業開始すぐに「テスト勉強を始めている人?」とたずねてみました。

すると,手を挙げたのは数名でした。

もちろん,やっていても手を挙げなかった生徒もいることでしょう。

それにしても,少なすぎます。

これが,中学生の現状です。

どうして勉強しなくてはいけないのかわかっていないのです。

つまり,学ぶ目的を見失っているのです。

そこで大切になってくるのが,キャリア教育です。

子どもの頃から,社会人としての将来の生き方について系統的に考えさせるために,2020年から「キャリアパスポート」がはじめられたと思います。

しかし,この効果がどれぐらいあるのか疑問です。(現場教師の仕事を増やしただけだという声もあります)

形式的な活動になっているように思います。

これでは,生徒の心に入っていきません。

きれごとばかりを書かせるから,そうなるのです。

キャリア教育がきれいごとすぎるから,生徒の心に入っていかないのです。

キャリア教育は,もっと泥臭くていいと思います。

さて,私が30代前半の頃,自分の学級に相当やんちゃな生徒がいました。

授業を受けずに,暴力,喫煙,けんか,器物損害,授業妨害などを繰り返していました。

その生徒にこんな話をしました。

「中学校を卒業して,働くかもしれないが人より1円でも多くの金をかせぐためには免許や資格をとったほうがいい。それには試験に合格する必要がある。試験は,平仮名だけじゃない。漢字も多い。つまり,漢字が読めないと合格できないんだ。もちろん,資格をとるためには数学の知識もいる。ある程度の技術も必要だ。将来,少しでも多くの給料を欲しいのなら,勉強する必要がある。勉強をして知識や技術を身につけておかないと,安い給料で他人にいいようにこき使われてしまうことになる。」

そして,その生徒に運転免許の問題集を渡して勉強しておくように言いました。

その後,その生徒は,運転,塗装,溶接,ボイラーなどの資格をとり,

現在は自分で会社を経営しています。

こういった泥臭いキャリア教育も必要なのかなと思います。

福沢諭吉も「学問のすすめ」でこう書いています。

実語教じつごきょう』に、「人学ばざれば智なし、智なき者は愚人なり」とあり。されば賢人と愚人との別は学ぶと学ばざるとによりてできるものなり。

私は,教師になる前の2年間,工業系(いわゆるガテン系,肉体労働系)の仕事をしていました。

雨の日も風の日も雪の日も暑い日も外で働いてきました。

その経験から,こんな泥臭いキャリア教育が必要だと考えたのです。