半径3mの教育論

中学教師の教育雑感記

3641 読破74冊目「みらいの教育」

●「みらいの教育」(内田良・苫野一徳 武久出版)★★★★

この本の副題が,「学校現場をブラックからワクワクへ変える」とあります。

教育社会学者の内田さんと教育哲学者の苫野さんの対談集です。

学校現場で悲鳴を上げている教師たちを救うためには,何が必要なのか,何を大切にすべきかを分かりやすく話しています。

特に印象に残ったのは,以下の部分です。

〈引用始まり〉

苫野「社会や教育を変えるためには,「不安」ベースと「ワクワク」ベースの大きく二つがあると思っています。(中略)これから,公教育の構造転換が確実に起こります。これもまた,「ワクワク感」がなければ決してうまくいきません。やらされ感や負担感ばかりを募る改革は,結局挫折していまうだろうと思います。」

「人格の感性に向けた教育とは,どこに存在するんかよくわからない,人間の崇高な理想像に向けて子供たちを教育する「特殊」なものではなく,〈自由の相互承認〉の感度を土台に、自ら〈自由〉に生きられる,〈自由〉な市民へと育むことにほかならない。」

内田「教育の特殊性を語る時,他業種とは別だと壁を作り,教育界に中でのみ対立をしてきたのではないでしょうか。その壁を取り払い,市民社会のルールを適用すべきです。」

「学校を論じたいならば,学校から離脱せよ。これが,苦悩の声を拾い上げていくために,今後の臨床教育学がとるべき一つの指針である。」

教育哲学と聞けば,いくら読んでもちんぷんかんぷんというイメージを持っていましたが,苫野さんの論はとても分かりやすく,面白かったです。

特に,歴史の中で,〈自由の相互承認〉という考えが生まれたことに納得しました。

これを苫野さんは,自分が自由になりたければ,自分は自由だと主張するのではなく,相手にちからづくで人に認めさせるのではなく,お互いがお互いに,相手が自由な存在であることを認め合うほかないと言っています。

 

みらいの教育―学校現場をブラックからワクワクへ変える (ワクワク対話シリーズ)

みらいの教育―学校現場をブラックからワクワクへ変える (ワクワク対話シリーズ)