半径3mの教育論

中学教師の教育雑感記

2072 32冊目「いじめ論の大罪」

●「いじめ論の大罪」(諏訪哲二 中公新書ラクレ★★
いつもそうですが,諏訪さんの本を読むと,教師という仕事を冷静に見つめることができます。
この本もそうですが,いじめについて冷静に考えさせられました。
マスコミや教育評論家など外側の人たちが,いじめ問題について論じることは簡単です。
例えば,尾木ママこと尾木直樹さんの論調もそうです。尾木さんは,いじめを人権問題として捉えています。たしかにそう言った面もあります。しかし,現状はそんなに単純ではありません。どこまでがいじめか,いじめでないか線引きが難しい部分もあるのです。このことを諏訪さんは次のように言っています。

〈引用はじまり〉
「また,尾木さんのようにいじめはいじめであり,重大な人権侵害として,そのレベルや内容を分別しないで扱うと,生徒(子ども)たちの学校生活や自由な交友関係を抑圧することになる。つまり,軽いいじめは子ども(生徒)たちの日常生活にまとわりついている。そのすべてを「人権侵害」として捉えれば,極論すれば,口もきくな,接触するなということにもなりかねない。生徒の自由を侵害する全体主義的な学校になる。
〈引用終わり〉

現場の教師がおかれている状況や権限をしっかりと認識して,また子ども性善説に偏らないで,いじめ問題について論じてほしいと思います。