半径3mの教育論

中学教師の教育雑感記

2117 弁当づくりは自立の始まり

今週発行した「学年通心39」号より

■弁当づくりは,「自立」の始まり〜子供に自分で弁当を作らせましょう〜
2月19日水曜日は,「弁当の日」です。名前通り,生徒自身が弁当を自分で作ってみるという日です。農林中央金庫が発表した『食に関する調査資料』(2012年5月都内の高校生400名対象)に,「昼食をどのように用意しているか」という質問がありました。結果は右の通りです。弁当を自分で作るという高校生は,わずか7%程度で,ほとんどが親に作ってもらうという結果になっています。
 弁当づくりは,「自立」するための大切な機会だと思います。その理由を弁当づくりに必要なことを挙げながら説明します。
①時間の管理…弁当を作るためには,時間がかかります。当然,早起きをする必要があります。自分で時間を管理する必要があるのです。
②材料の選定…どんなおかずを作るかを考える時に,栄養に関する知識やそれぞれの材料の価格,どんなおかずをどれぐらい入れるかなども考えなければいけません。また,季節によっては腐りやすい材料もありますから,そういった知識が重要になってきます。命に関わることです。
③段取り力…何から作り始めると効率がいいのかという調理の順番は,やってみないと分からないものです。野菜はいつ切るのか,唐揚げはいつ揚げるのかなど段取りが悪いと無駄な時間がかかりすぎてしまいます。この段取り力は,勉強や仕事をする上でもとても大切な力となります。
④デザイン…おかずの色や盛り付けをどうするか,見た目がきれい,かわいい,おいしそうとかいうことも考える必要があります。味も大切ですが,見た目が良いとさらにおいしくなるものです。
 大阪府立高校で家庭科を教えている南野忠晴先生は,次のように言っています。(『正しいパンツのたたみ方』(岩波ジュニア新書より引用)
「夕食のおかずや冷蔵庫の中身が気になり始めたら,家族の朝食や夕食までに関心が広がります。炊飯器に残っているご飯の量も自然と気になってきます。ご飯がないと,次の日の朝に困るからです。炊飯器の使い方も自然と覚えることでしょう。いちいち誰かに炊いてもらうより,自分でやったほうが早いからです。弁当づくりが当たり前になったとき,家族全体のことを考えながら買い物をしたり家事をしたりしている自分にやがて気づくことになります。弁当だけに限定して準備しうるほうが,かえって面倒くさいからです。面倒をみてもらうばかりだった自分が,家庭の支え手のひとりへと見事な変身を遂げたのを実感する瞬間です。」
たかが,弁当作りですが,自分のことを自分でやるという「自立」につながるのです。それが,家族の一員としての自覚が生まれるきっかけにもなるのです。「弁当の日」には,少々の手伝いは必要だと思いますが,できるだけ子供だけの力で弁当を作らせてほしいと思います。

下の写真は,今日の弁当の日に2年生女子が作ってきた弁当です。