半径3mの教育論

中学教師の教育雑感記

5614 永瀬拓矢九段

八冠という前人未到の大記録を打ち立てた藤井聡太さんのニュースが日本中を沸かせました。

藤井さんの謙虚さと探究心あふれる姿勢に感動した人も少なくないでしょう。

 

しかし,私が興味を持ったのは,藤井さんではありません。

王座戦で負けた永瀬拓矢さんです。

永瀬さんは,藤井さんの唯一の練習パートナーで,月に3回ほど対局していて,しかも,研究会への参加も熱心で休むことなく,若手と一緒に将棋について学んでいる人なのです。

何よりも第4局で痛恨のミスをした時の永瀬さんの反応にとても人間臭さを見たのです。

 

10月13日の読売新聞「編集手帳」にこんな文が掲載されていました。

永瀬さんの父は川崎市でラーメン店を営む。他の店に習おうと自分より若い料理人のもとで修業する姿を見た永瀬少年は,「努力のしかた」を父の背中に学んだ。藤井さんが14歳でプロ入りすると,「一緒に練習しませんか」と自ら声をかけ,ともに成長してきた。

 

おそらく,藤井さんを扱った道徳教材が教科書に掲載されるかもしれません。

しかし,私が道徳授業をつくるとしたら,永瀬拓矢さんがいたから藤井聡太さんは栄誉あるタイトルを手にできたということに中心をおいたものにしたいです。

 

作家の小川洋子さんは,10月12日の読売新聞にこんな文を寄せていました。

若い天才の誕生は,大勢の人々に喜びを与えるだろう。と同時に,その天才の真正面に座る永瀬拓矢の姿もまた忘れてはならない。八冠という未踏の地へ向かう旅を,最後まで共にした相手があってこそ,藤井聡太は孤高の頂点にたどり着けたのだ。

まさに,このことを道徳授業で生徒に伝えたいのです。

 

藤井さんに負けた永瀬拓矢さんのコメントです。

 

決定力が足りずに負けになってしまうところがあったので,何とかしなくてはいけないが,全力で指すことができた。内容としては,手応えのある瞬間もあったのかなと思う。

 

藤井さんと同じく,なんと謙虚ですがすがしく,気持ちの良い若者なんだろうと思いました。