半径3mの教育論

中学教師の教育雑感記

4649 作者の気持ちを20字で答えることの難しさ

ネットで国語の試験問題を検索してみると,私が好きな種田山頭火の句が出題されていました。使われた句は,
〇「分け入っても分け入っても青い山」です。
問題の1つに,「作者の気持ちを20字で答えよ。」というものがありました。
この問いに答えるためには,山頭火の人生を知っておく必要があると思います。
ちなみに,山頭火がこの句をつくったのは,大正15年(1926年 44歳)4月です。
10歳…母が井戸に投身自殺をする。
27歳…結婚。
34歳…父が行方不明となる。
36歳…弟が自殺する。
38歳…離婚。
41歳…関東大震災に遭い,途中で憲兵につかまり刑務所に留置される。
42歳…泥酔して熊本市電を止める。寺に預けられる。
43歳…出家。熊本県植木町観音堂の堂守となる。
44歳…尾崎放哉(同じ自由律俳人)が小豆島の寺で一人寂しく息を引き取ったという知らせを聞く。と同時に寺を捨てて放浪の旅に出る。
そして,九州山地の山の中で,この句をつくったのです。
山頭火は日記にこう書いています。
「放哉居士の往生はいたましいと同時に,うらやましいではありませんか。行乞(ぎょうこつ)しながらも居士を思ふて,瞼の熱くなった事がありました。私などは日暮れて道遠しであります。兎にも角にも私は歩きます。歩けるだけ歩きます。歩いてゐるうちに,落ち付きましたらば,どこぞの縁のある所で休ませて頂きませう。それまでは野たれ死にをしても,私は一生不在の漂泊をつづけませう」
作者の気持ちを考えて,20字で書くということは本当に難しいと思いました。
参考
〇「山頭火句集」(夏石番矢編 岩波文庫
〇「放哉と山頭火」(渡辺利夫 ちくま文庫