〇「終わらざる夏(上巻)」(集英社)★★★★★
浅田次郎さんの作品を読むと,どうしてこんなにも心が震えるのでしょうか。
8月15日の敗戦の日までには下巻を読破したいと思っています。
こんな場面がありました。
〈引用はじまり〉
疎開先で子供たちを教育する立場である浅井訓導の独白です。
「浅井は南面した本堂の縁側に座って,あの夜と同じ星座を仰いだ。目を凝らせば,頭上には滔々と天の河が流れていた。そのほとりに輝く一等星は,琴座のベガ,鷲座のアルタイル,白鳥座のデネブ,三つの星を結ぶ,夏の大三角形。まだ敗けたわけではない。教科書がなくたって,鉛筆も帳面も定木も足らなくたって,あすの晩は星の伝説を子供らに教えてやろう。戦争のひもじさを忘れてしまうくらい美しい,星々の物語を。」
(中略)
そして,「星めぐりの歌」を口ずさみました。
銀河の詩人はみずからやみずからの子弟のためではなく,未来の飢えた子供らのために,すばらしい物語と詩を書いてくれた。
〈引用おわり〉
こういった文学作品に出合い,心が震える瞬間を積み重ねていくとで,感性が磨かれていくのだと思います。
今から下巻を読みます。