読売新聞に掲載されていた建築家の隈研吾さんの話に興味を持ち,この本を読んでみました。
1964年と2020年の東京五輪をベースにして彼の人生を書いているのですが,同時に建築に対する哲学の変遷も書かれています。
新国立競技場を見たときに,単純に「和風」を感じましたが,実はそうではない深い考えがあったことに驚きました。
建造物には建築家の哲学が反映されているのです。
例えば,文明論であり環境論であり国家論であり歴史論であり科学論でありもあるのです。
それらが集約され表現したものが新国立競技場なのです。
〈引用始まり〉
徹底して細い木を使うことにこだわった。(中略)庶民的な材木を使うことが,21世紀の国立と呼ばれる競技場には,最もふさわしいと感じられた。特別な材料を使った,特別な形態の建築が,国の象徴となる時代ではない。庶民的な材料,見慣れた,安い材料を使ったものこそが,「国立」に名にふさわしく,少子高齢化の地味で渋い日本にはふさわしいと,考えたのである。
〈引用終わり〉
まt,デザイン界には「縄文」対「弥生」という議論があったことも知り,うなってしまいました。
建築には興味があまりありませんでしたが,隈研吾さんを知ってから,少しずつ調べている最中です。なかなかおもしそうです。
予算オーバーでボツになった宇宙船のような競技場にならなくて本当によかったと思いました。
是非,新国立競技場に行き,「風の大庇(おおひさし)」と「空の杜(そらのもり)」を体感したいと思います。
来年,この競技場で世界のアスリートたちが何を感じ,どんなコメントをするか楽しみです。
最近の読んだ本で一番興奮を感じた1冊でした。