私が幼い頃は,田舎ということもあって闇がありました。
特に,神社へ向かう石段は真っ暗で本当に怖かった記憶があります。
今では,要所要所に街灯があり,コンビニの明かりがあり,民家の窓からの明かりもあります。
現代人は,闇を忘れたと言ってもいいでしょう。
さて,この本は,その闇を体験するためにアラスカへでかけた冒険家の話です。
この本の中で,角幡さんは闇について次のように書いています。
〈引用始まり〉
光があると人間の存立基盤は空間領域において,安定し時間領域において安定し,心安らかに落ち着くことができる。光は人間に未来を見通す力と心の平安を与えるのである。それを人は希望という。つまり,光とは未来であり,希望だ。
ところが光がないと,心の平安の源である空間領域におけるリアルな実態把握が不可能となる。(中略)
闇に死の恐怖がつきまとうのは,この未来の感覚が喪失してしまうからではないだろうか。
〈引用終わり〉
闇を体験することで,人は生物的感覚を磨くことができるのではないでしょうか。