半径3mの教育論

中学教師の教育雑感記

2236 個性なんて簡単に見つからない

本日,発行した学年通心17号より一部を紹介します。

■職場体験学習で何を学ぶのか
 来週,9月17日(火)から20日(金)まで職場体験学習を実施します。市内の24事業所で,4日間様々な仕事を体験することになります。7月に行った職場体験学習の事前指導で,働くことについて次のような話をしました。
「職場体験学習でどの職場にしようかという時に,ほとんどの人が「好きな仕事だから」,「興味がある仕事だから」,「将来,希望している仕事だから」など理由を挙げると思います。確かにその通りでしょう。しかし,自分がこれから生きていく中で,体験できる職場の数はそんなに多くはないと思います。私も教師になる前は,2年間程,土木作業の仕事をしていましたので体験した職場の数はわずか2つです。大学生のアルバイトを加えても,職場の数は5つぐらいです。今になって,もっといろいろな職場を体験しておけば良かったと思います。そこで,みんなには職場を選ぶ時に「好きだから」や「興味があるから」だけでなく,「あまり興味がないから」や「やりたくないから」とかいう理由も加えて欲しいのです。みんなには,いろいろな職場を体験して欲しいのです。全然興味がない職場で4日間働く中で,その仕事の素晴らしさや社会的意義を見つけるかもしれません。また,実際に仕事をやってみると,新たに自分が得意な部分に気づくかもしれないのです。」
 このことについて,東京大学玄田有史(げんだゆうじ)先生は次のように言っています。「本当の個性や専門性なんて,そんなに簡単に見つかったり,得られるものでは絶対にないんだよということを言いたいのです。むしろ,個性や専門性なんて,何年も試行錯誤しながら,やっとのことでなんとか身につけるものなんです。一部の特別な運動能力を持つ人とか,アーティストとして恵まれた才能がある人とか,天才的な頭脳を持つ人を除けば,十代や二十代では,個性的であるとか,専門的であるなんて不可能なんです。(中略)大事なのは,自分も知らない本当の自分の個性や専門性をいつか身につけたいと思い続けること,そのために行動し続けることだけです。」(『14歳からの仕事道』理論社)自分のやりたいことや好きなことばかりではなく,あまり好きではない興味がないことを経験することで,自分の個性や得意なことが見えることもあるのです。職場体験学習で,第一希望の職場に入れなかった人もいるでしょう。しかし,その職場で嫌々ながら働くのではなく,自分の個性を見つける大きなチャンスと考えて意欲的にいろいろな仕事をこなして欲しいのです。このような考えから,職場体験学習の日数を昨年度より1日延ばして4日にしたのです。この4日間,自分が社会にどれだけ通用するのか,また自分がどれだけ社会に役に立つのかを実感して欲しいと思います。君たちの活躍を期待しています。