半径3mの教育論

中学教師の教育雑感記

2094 38冊目「作画汗まみれ」

●「作画汗まみれ 改訂最新版」(大塚康生 文春ジブリ文庫★★★
宮崎駿さん,高畑勲さんの名前は知ってる人は多いでしょう。
この大塚康生さんを知ってる人は,結構なアニメ通です。
ルパン三世 カリオストロの城」や「未来少年コナン」のエンディングに作画監督として大塚さんの名前を見たことがある人もいるでしょう。
この本は,大塚さんが日本のアニメ歴史について証言した本です。
読む前は,アニメの裏話的な内容を予想していましたが,そうではありませんでした。自分が知っているアニメの歴史とは違った驚きの内容も度々書かれていました。
例えば,大塚さんは,手塚治虫さんを漫画家としては認め尊敬していましたが,「鉄腕アトム」などのアニメ作りに関しては批判的であること。
ディズニーアニメは,日本のアニメーターがすべて尊敬していたわけではなく,アンチディズニーの意見が多かったこと。などです。

あとがきで大塚さんはアニメについて次のように書かれています。
〈引用始まり〉
かつて絵筆が鉛筆に替わったように,今や鉛筆がマウスやペンタブにかわりました。しかし,どんなに道具が発展しても,人は原初の「絵」の持つおもしろさを捨てないでしょう。例えば幼児が描いた「お父さんの顔」とお父さん本人の写真をくらべると,幼児の描いた顔はお父さんと似ても似つかないとしても,そこには幼い子供の感性と親子の愛が表現されているのです。それがどんなにリアルに描かれたとしても写真のコピーでないかぎり,描いた人の創造力のなかでのリアリズムであって,そこには独立した「存在感」があるのです。絵の幼さがかえって人間のやさしさや可能性を思わせてくれます。アニメーションが”絵”であるあいだは,この原則は変わることがないと思います。
〈引用終わり〉

この本を読み終わって,アニメーションというよりも動画という言葉がピッタリくる熱い時代があったことを知りました。