半径3mの教育論

中学教師の教育雑感記

2380 野口芳宏先生からの学び①

2002年から2011年まで続いていた私のホームページには,いろいろなコーナーがありました。
例えば,
・生徒との信頼関係づくり
・学級づくり
・こんな時には,こんな話を
・通心クラブからの学び
・生徒指導実践
などです。

今回は,そのコーナーの1つである「野口芳宏先生からの学び」で書いた記事を折に触れて紹介していきたいと思います。
野口先生の講座を受けた時の学びを書きつづったものです。
今回は,「話術」がテーマです。

〈以下引用〉

その1 「話術」からの学び
 今までに5回ほど野口芳宏先生の講演を拝聴し,模擬授業を受けた。その講演や模擬授業における,野口先生の話術や授業技法についてメモしておいたことをまとめることにした。
 授業は教師の語り抜きには成立しない。子どもを引きつける魅力ある授業を行うためには、教師自身が話術を磨き、鍛えることが重要課題である。しかし現実、話術を鍛えている教師はどれぐらいいるだろうか。私も、野口先生の話術を大いに参考にして魅力のある授業作りに励んでいきたいと思う。  

1 絶妙な間の取り方
 発問したあとの間の取り方は抜群である。わずか2〜3秒程度の短い時間だがこれで授業の緊張感を高めることになる。

2 強弱のつけかた
 大いに笑わせ、盛り上げたあと,瞬時に静かで落ち着いた話に移す。このバランスがすばらしい。さすが名人である。

3 分かりやすい例
 ベルサイユ宮殿の話や奥さんの話など分かりやすい例をあげて説明する。野口先生が「難しいことを難しく話すことは誰にでもできることだ。難しいことをやさしく分かりやすく話すことが大切だ」と言われていたことを思い出す。

4 豊かな表情
 笑顔、真剣な表情,遠くを見つめる表情,宙を仰ぐ表情など,答えに対して様々な表情で反応し,生徒の気持ちの高揚を図っている

5 評価語のバリエーション
 生徒が発言したあとの一言,これを私は「評価語」と名付けているが,この評価語に様々なバリエーションがある。メモしたものを列挙してみる。

 「ふーん」「立派」「上手に逃げたね」「無難に逃げたね」「うーんと簡単に言えば」

 「おんや×がいるねえ」「何か文句あるの」「OK」「ちょっとピント違うではないの」

 「へーーー」「へ」「もう少し詳しく」「何だって」「なかなか」「うんうん」

 「何か出てきましたか」「おーーーっ」「こりゃ複雑だ」「これはそうですよ」

 「うーーんよかった」「いいです」「そのとおり」「正解」 

 授業において,生徒が発言した時の教師の瞬時の言葉が重要である。どの生徒にも同じ言葉をかけても生徒の意欲は引き出せない。答えの内容,姿勢などをビシッと評価できる言葉を数多く持っておくことだ大切だ。

6 ○×を書かせる
 全員参加の授業にするための実に簡単な発想である。参加者全員に意志決定を強制する。教育は強制である,という野口先生のポリシーが顕著に表れている点である。
 ○×をつけることにより,次の展開が楽しみになるという学習意欲も向上できる。

 そして,最初に必ずこう問う。「○と×どっちが多いと思う」これにより生徒の緊張感を高め,次の展開の期待度をより高めることができる。また,手を挙げたら隣や全体を見てごらんと言い,自分の意見と同じ人を確認させ,指名した時に○と×を急に変えて逃げないような布石を打っておくことも忘れない。ここが鍛えるということにつながっている。

7 隣と相談させる
 抽象的な発問後,重苦しい空気が漂ってきたら「隣近所で答えを見せ合ってください」という指示を出す。このことにより,空気が和み意見が言いやすくなる。しかし,間延び過ぎると授業の緊張感を崩す原因となるので要注意である。

8 反対語を書く
 聞き慣れない言葉でも反対語を並べ書くことにより分かりやすくなる。
 (例)「利己的」と「利他的」,「可視的」と「不可視的」,「即効的」と「遅効的」
 「俗人」と「聖人」,「悲観と「楽観」,「受験古典」と「教養古典」,「無欲」と「強欲」

9 ことわざなどの引用
 タイミングよく故事成語やことわざ,俳句,川柳などを持ち出し,説明を分かりやすくする。

 (例)「悪銭身につかず」「正直の頭に神宿る」「世の中の仇(かたき)は酒,金,女 早く仇 に巡り会いたい」「教師は伝達者ではなく,影響者であれ」「本音・実感・我がハート」など

10 漢字でまとめる
 説明が長くなった時は,漢字に置き換え視覚に訴え,インパクトを与え記憶に残らせる工夫をする。
 (例)「本能肯定主義」「注目機能」「天与」「読本道徳」「障害者道徳」「偉人道徳」「担任道徳」「実感道徳」「人間とは無限多面体」

11 数字の引用
 パーセントや人数、点数など具体的な数字をあげる。具体的な数字を見せることにより,説得力が強くなる。

〈引用終わり〉

いま読み返しても,勉強になります。忘れていたこともあり,明日から再び実践していきたいと思います。