半径3mの教育論

中学教師の教育雑感記

2138 どうして卒業式を行うのか

本日発行した「学年通心42号」より

■どうして卒業式を行うのか〜気仙沼市立階上(はしかみ)中学校卒業式から学ぶ〜
 卒業式を来週に控えた11日火曜日に2時間を使って在校生の卒業式練習を行いました。
 練習に入る前に,心構えをつくらせるために次のような道徳授業を行いました。
①階上中学校卒業生代表である梶原裕太くんの答辞を読みあげていきました。(全文は裏面に掲載)
 ちょうど、十日前の3月12日、春を思わせる暖かな日でした。わたくしたちは、そのキラキラ光る日差しの中を希望に胸を膨らませ通いなれたこの学舎を、57名揃って巣立つはずでした。
②(ここまで読み上げた後で)何か気づくことはありませんかとたずねました。
 多くの生徒が最後の「巣立つはずでした」という部分に気がつきました。そして「卒業式に出られなかったから」,「3月12日の前日の東北大震災で亡くなった生徒がいたから」と発表しました。
③続きを読みました「前日の11日。一足早く渡された、思い出のたくさん詰まったアルバムを開き、十数時間後の卒業式に、思いを馳せた友もいたことでしょう。」
東日本大震災」と名づけられる、天変地異が起こるとも知らずに・・・
 階上中学校では3年前の東日本大震災で卒業する予定だった3名の生徒が亡くなりました。卒業式を行う体育館は避難所になっているため,後ろの方には避難生活をしている住民といろいろな家財道具や支援物資が置かれていました。そんな状況でも階上中学校では卒業式を行われたのです。④「どうして卒業式を行うのでしょうか」とたずねました。
「一生に1度だから」「とても大切な式だから」「大震災で被災したからこそ卒業式をしたのだと思います」という意見がでました。
⑤続きを読みました。「天が与えた試練というには、むごすぎるものでした。辛くて、悔しくてたまりません。時計の針は、14時46分を指したままです。でも、時は確実に流れています。
生かされた者として、顔を上げ、常に思いやりの心を持ち、強く、正しく、たくましく生きていかなければなりません。命の重さを知るには、大きすぎる代償でした。しかし、苦境にあっても、天を恨まず、運命に耐え、助け合って生きていく事が、これからの、わたくしたちの使命です。わたくしたちは今、それぞれの新しい人生の一歩を踏み出します。どこにいても、何をしていようとも、この地で、仲間と共有した時を忘れず、宝物として生きていきます。」
⑥「卒業式を成功させるためにあなたは何ができますか」とたずねました。
「練習を一生懸命にします」「練習をまじめにします」「感謝の心を持ちます」などの意見が出ました。卒業式の目的は様々あると思います。卒業生を祝福する,お世話になった保護者や地域の方々
などに感謝する,社会人としての自覚を持たせるなどです。しかし,階上中学校では,生き残った人々と共に生きていく決意をするという目的もあったと思います。
 卒業式の練習中にふざけたり,姿勢が悪かったり,歌声が小さかったりしては このような目的を達成できないと思います。いよいよ来週18日は,第65回卒業証書授与式が行われます。 一人ひとりが,卒業式の目的をしっかりと考えて本番に臨み,成功させてほしいと思ってます。
 なお,初めての在校生練習でしたが,姿勢も歌声もがんばっておおむねできていました。