●「伝説の弁護士,会心の一撃!」(長嶺超輝 中公新書ラクレ)★★
弁護士は語りで勝負というところがあります。テレビドラマの「リーガルハイ」の弁護士みたいなおしゃべりはいないまでも,この本には,語りのうまさの弁護士が紹介されています。
例えば,大阪空港訴訟の木村保男弁護の語りです。その一部を紹介しましょう。
〈引用始まり〉
「地元の人々は騒音とは言わない。爆音,激音,轟音,痛音。口々に訴える。表現は異なっても,その音が頭からおおいかぶさり,おそいかかり,のしかかり,おさえつけ,耳をろうし,身体をすくませ,腹の底をえぐり,頭をなぐりつけ。心臓をしめつけ,動悸を早め,精神を異常にする狂気の音であることは変わりない。(中略)人々は言葉を奪われて沈黙する。やがて,沈黙は憤りに変わる。人々は相語らい,励まし合って,市役所,県庁にその苦しみを訴え,空港,運輸省にその怒りを投げつけた。」
〈引用終わり〉
この文を読んだだけでも,被害者の苦しみが伝わってきます。まさに語りのプロです。
この他,阿部定事件や足利事件を担当した弁護士たちの熱い語りが紹介されています。
下手な小説よりも面白い1冊です。
伝説の弁護士、会心の一撃! 炎と涙の法廷弁論集 (中公新書ラクレ)
- 作者: 長嶺超輝
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2013/09/09
- メディア: 新書
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