半径3mの教育論

中学教師の教育雑感記

2109 41冊目「花まんま」

●「花まんま」(朱川湊人 文藝春秋★★★
昭和40年代,つまり私が小学生だった頃の話です。
近所には何となく怪しい雰囲気がまだ残っていました。

例えば,学校からの帰り道に知らないおじさんが,座っていて怪しげなものを売っていました。トムボーイシーモンキーや透視メガネ,スパイセットなどです。(おそらくこんな商品は誰も知らないでしょうね)
例えば,昼間から酒を飲んで泥酔したおじさんがいました。
例えば,秋のお彼岸近くになると大勢でお遍路さんがやってきていました。
例えば,UFOを見たと言い張るクラスメイトがいました。
例えば,全部のくじをひいても1等が当たらない駄菓子屋さんがありました。
例えば,消防車のサイレンを真似しながら走っているおじさんがいました。
例えば,チョコレートをやるからと言って子供を誘拐していく人さらい(実際に私は見たことがありません。)が出たらしい。

何となく怪しいのです。しかし,こんな人たちを決して排除するわけではなく,存在価値を認めていたように思います。
こんな怪しい人たちは,中学生の頃には見なくなっていきました。今考えてみると,不思議な時代だったと思います。しかし,楽しい部分もあったように思います。

さて,この本ですが,まさに私の小学生の頃の時代を描いたものです。怪しい不思議な話がつまっています。言い換えるならなば,ファンタジーホラー小説といった感じです。
朱川さんの文章はとても読みやすいのが特徴です。短時間で読破しました。
懐かしさと怖さが入り混じった短編作品集です。
以前読んだ「かたみ歌」も面白かったので,さらに読みたくなり,3冊注文しました。
しばらくは,朱川さんを追って行きます。

花まんま (文春文庫)

花まんま (文春文庫)