半径3mの教育論

中学教師の教育雑感記

1571 夏講義終わる

長崎大学に着いたとたん,蝉の鳴き声で暑さが耳から入ってくるような感じでした。講義室に入ると約80名の大学生が座っていました。大きな声で「こんにちは」とあいさつをしました。学生から元気がない声で「こんにちは」とかえってきました。「元気がないですね。もういちど。こんにちは」と言うと,今度は元気な声がかえってきました。いつもの講義とは違うぞという表情でした。

最初に「小中学校の道徳授業が好きだった人?」きいてみました。すると,15人が好きで,残り65人が嫌いでした。嫌いな理由として,「当たり前のことをきかれるから」という意見がありました。この数字を見ただけで,道徳授業の問題点が見えてきます。
講義の大きな柱は,ドラマチックな出会い(道徳授業)をさせることで生徒はよい方向へと変わるというものでした。また,道徳授業にできること,道徳授業の限界などについても触れました。道徳授業には無限の力があるわけではなく,そこに様々な教育活動(教科の授業,学活,行事,教師の関わりなど)が結びつくことで,生徒はよい行動をとるようになると考えています。これがいわゆる「道徳的実践力」だと認識しています。
その後,3本の授業を紹介しました。1本は,文部科学省の資料を使った,型通りの授業をやりました。残りの2本は,私がつくった道徳授業を紹介しました。今までと違った点は,発問や指示の意図を解説したことです。どうして,こんな発問にしたのかなどです。
いつもよりも早く終わった感じがしました。最後に講義の感想を書いてもらい,終えました。学生の感想からいくつかを紹介します。

・今まで受けてきた道徳の授業のイメージを変えた90分でした。私自身もずっとわくわくしていられたので生徒たちにとってはもっとわくわくどきどきする時間になっているのではないかと思います。
・道徳教育という分野は,その領域が非常に広くて指導が大変困難というイメージがあったが,今日の先生の講義を聞くと大変ではあるが,1つずつ大事なポイントをおさえていけば授業ができるのかもしれないと思った。
・道徳は生徒を「よりよい方向」へと変える時間とのことだったが,自分にはこの「よりよい方向」というのがあまりわからなかった。「よりよい方向」とは何か,好ましいと思われるもの,状態があって,その方向に是正していくことなのだろう。しかし,この好ましいとは本当に生徒にとって好ましいことなのか。それとも,私たち大人が子供にこうあってほしいと思うものなのかによって大分意味が違ってくるのではないだろうか。
・先生の資料を見つける力や活かす力が本当に素晴らしく講義中に何度も泣いてしまいそうになりました。今までに受けてきた道徳の授業,私はひとつも思い出せませんでした。先生のような授業を受けていたらよかったのにと思いました。
・道徳の読み物の教材は,いつもさらーっと受けていた気がする。先生の授業は入りやすく,楽しく受け入れて,やってみようかなと気持ちになる。子供たちを引き付ける,ドラマチックな「出会い」のある道徳は私にとって新鮮だった。
・9月の教育実習で道徳の授業をすることになっているので,とても勉強になりました。「出会い」をつくる道徳授業,しっかりと考えていきたいです。

いつもは中学生を相手にして授業をしていますが,今回のように違った相手に授業をすることで,話の仕方や例示の仕方や構成など工夫をします。これが大きな学びとなっています。
1年に1回の講義ですが,自分の実践や考えを整理,まとめるためには,素晴らしい機会だと思っています。